令和元年度一級建築士設計製図試験「美術館の分館」作図問題の解説

 このページでは令和元年度一級建築士設計製図試験「美術館の分館」作図問題について各項目に分けて解説していきます。
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主文

隣接する本館の附属館として主に市民のための教育・普及活動の場として、美術・工芸等をはじめとした幅広い文化芸術の創作活動の支援、体験学習講座や創作活動で作製した作品等の展示、企画展等に使用するものとし、本館とともに市民の文化・芸術・創造の拠点となることを目的として計画する。となっております。10月8日試験問題と多少言い回しは違いますが似たような内容となっております。

敷地・建築物及び周辺条件

敷地は北側に本館が存在し、本館に面した大通りの道路から分かれた幅員8mの道路が計画敷地に面しています。別図では本館の内部の様子が記載されています。計画敷地は本館のライブラリスペースに面していて、本館の出入り口は計画敷地の北側にアクセスできるようになっています。このことから本施設は北側からのアプローチに配慮する必要があります。また本館を経由せずに東側道路から直接分館にアプローチできる出入り口が必要となります。
 西側と南側は公園となっており、かっこ書きに「防火上有効な公園である。」とあることから、延焼の恐れがある範囲からは除外されるものと考えられます。本館からの行き来から隣地から敷地へは自由に行き来できるものとする。
用途地域:第一種住居地域
建蔽率:60% 容積率:200% 
構造種別:自由 階数:3階建て
床面積合計:1800~2200㎡
 当施設はバリアフリー法の特定建築物に該当し、「建築物移動等円滑化基準」をみたすものとする。
10月8日試験問題との大きな違いは本館敷地と計画敷地の長辺が北南配置と東西配置で違うことと、本館と計画敷地で共有する道路の幅が8mと狭いことにあります。また指定床面積が10月8日試験問題では2000~2400㎡に対して 本試験は1800~2200㎡と小さくなっています。

要求室

最初の条件定義で「展示室A~C、ホワイエおよび各種アトリエは天井を張った状態で天井高3m以上確保する」とあります。これに加えてダクト等を通すことを考えると懐1.5mは確保が必要であることから階高は4.5m以上必要となります。一番大きい要求室の多目的展示室は天井高が6m以上と指定されていますので構造計画的にも2層で計画することが望ましいです。短辺/長辺を1/2以上とし(長辺比1:2より細くなってはならない)、無柱空間とするとなっていることからPC梁の使用が考えられます。また専用の倉庫と空調機械室が指定されているので、計画する時はその分を見込んで床面積を計算する必要があります。各展示室に「前室」「倉庫」を設置指定とあることから各展示室は指定床面積+約10㎡で計画する必要があります。展示室Aは「光や陰影に配慮された展示」とあることから自然採光への配慮が考えられます。展示室Bは「映像や音響に配慮された展示」とあることから防音と映像が外からの光により邪魔されないような配慮が必要と考えられます。2番目に大きい要求室の市民アトリエは「屋上庭園に直接行き来」条件が計画の大きなポイントです。また専用の倉庫と準備室が要求されているので計画する時はその分を見込んで床面積を計算する必要があります。展示関連諸室もアトリエ関連諸室も大きな要求室がある上に要求室の数が多いので、各フロアでどのようにゾーイング分けするかがポイントとなります。共用部門の吹抜けは前年度のスポーツ施設では指定が3階連続吹抜けのみの条件でしたが、当年度は短辺/長辺を1/2以上、40㎡以上、自然採光確保の為のトップライト設置指定と多条件となっています。カフェは前年度のスポーツ施設でも出題され、前年度同様に厨房設置が指定されています。ショップはカフェと併設指定となっているので、カフェを計画する際はショップを含めて床面積を計算します。多目的トイレは今までは施設全体に1つあればよかったのですが、本課題では各階に要求されています。事務室は受付カウンターがあることから、利用者の入退管理ができるように各利用者用出入り口を監視できる位置に設置する必要があります。荷解き室は外部から搬入されてきた展示物を一時保管する室で通常はトラックから降ろした展示物をすぐに保管できるように搬入トラック用駐車場の付近に計画されます。ゴミ保管庫は例年では屋外に設置可能でしたが本課題では屋内設置指定となっております。設備スペースは1階指定のポンプ室を除いて、すべて屋上設置指定となっています。なので規模が大きいことからトップライトの位置ととかぶらないように要注意です。また本課題では展示物の搬入の他に屋上の設備スペースのメンテナンス若しくは搬出入の為の人荷用EVの設置が指定されています。

屋外施設

本課題は施設の指定延べ面積が小さい分屋外施設に力を入れた課題となっております。特に本課題発表時から条件に記載されていた「屋上庭園」は本課題では計画の大きなポイントでした。
 
2階床レベル(1階の屋上)に設置指定であることと、市民アトリエと直接出入り指定であることから、強制的に市民アトリエは2階設置となります。樹木を植栽する為の客土(深さ500mm)は60㎡以上確保とあります。延べ面積も小さいことから、屋上庭園の指定床面積は100㎡以上と制限は無いものの余り大きく設定すると延べ床面積をオーバーしてしまう恐れがあり、100㎡ギリギリでは展示スペースと休憩スペースの確保に注意しなければなりません。その他屋外施設では「屋外のカフェテラス」あります。条件として地上設置指定及び公園への眺望に配慮指定となっています。名称からもカフェ専用のテラスなのでカフェと隣接させる必要があることからカフェの設置位置も1階設置で公園の眺望に配慮された位置となります。次に要求駐車場として美術館の展示物搬入用トラックの「トラックヤード」があります。こちらも荷解き室の搬入口に近接して設置とあることから荷解き室の位置もトラックヤードに近接した位置となります。その他駐車場で「車椅子使用車用駐車スペース」2台分と「サービス用駐車スペース」1台分の設置が要求されてます。前年度の「スポーツ施設」では駐車場の設置が要求されて無かったのに対し、当年度の課題では車椅子使用車用・サービス用に加えて搬入用トラック用の駐車スペースが要求されていることから、駐車場の計画が大きなポイントの一つとなっています。最後に本館の出入り口から分館の出入り口までの経路に彫刻とベンチが置ける30㎡以上のオープンスペースの設置が要求されていることから本館に通じる出入り口の前はある程度のスペースの確保が必要となります。

留意事項

 留意事項は当年度課題ならではの条件として「公園との眺望に配慮」と「本館と分館との来館者の動線に配慮」、「断面図における天井高さ・天井懐の適切な計画」「乗用EVと人荷用EVの計画」が挙げられます。全て要求室と屋外施設で記載されていることなので、ここで新たな条件は記載されていませんので条件の再認識として読み取ります。

特記事項

前年度の「スポーツ施設」に引き続き、特記事項に「建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置及び防火設備、防火区画に用いる防火設備の位置及び種別」の記載が指定されました。別枠に凡例を大きく表示されているのも前年同様です。標準解答例の表紙にも「設計条件のうち今回の試験において不十分な回答が多かった『延焼のおそれのある部分』『防火区画』等の一つの考え方をこの標準解答例に示していますので参考として下さい。」とあることから、前年度に引き続き、防火設備の表記について試験製作者が強調したいという意図が伝わってきます。次に①チの「屋上設備スペースの位置を点線で記載」とのことですが、本課題の屋上設備スペースは約120㎡と大きく指定されていることからトップライト等の位置とかぶらないように要注意です。③ハの屋上庭園は本課題のメインと言っても過言ではない施設なので、記載内容をしっかり把握する必要があります。断面図は多目的ホールを含んだ東西方向(敷地短辺方向)に切り口指定されてますが、「1~3階の立体構成が分かるように」とあることから、多目的ホールが2層で計画した場合に多目的ホールと屋根の部分だけ切って1層目と2層目の立体構成が分からない断面図にならないように注意です。

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